第02回 皮膚消毒…「ウチワのはなし」

血液培養をする前や、髄液採取の前の皮膚消毒は、どうしていますか?

 まず、患者さんの身体の下に消毒液が滴れてもシーツやパジャマが汚れないようにペーパーやガーゼを置きますね。次にイソジンに浸った綿球を“絞って”、穿刺しようとする場所から外側へ向って渦巻きを描くように比較的広く消毒。もう一つのイソジン綿球でもう一度同じように消毒。つつーっとイソジンの茶色い液が滴れていくのを見ながら、「ハイポ下さい。良く絞って下さいね。」なんぞと看護婦さんにお願いして、イソジンの茶色を消しながらまたハイポアルコールに浸っていた綿球で渦巻きを描くように外側へ向って消毒。イソジンの茶色が窓枠のように残る範囲までハイポを使っておしまい。人によっては、「びしゃびしゃだから滅菌ガーゼ下さい」と言ってガーゼで穿刺部位をふいて消毒完了。

 というのが、よく行われる「皮膚消毒」だと思います(私も大学病院にいるころには先輩から教わって、こうしていました)。

 ところが、この消毒方法はあまり意味が無いということを知りました。もちろん、ある程度の皮膚消毒はできますが、イソジンでもアルコールでも「乾かす」ことが大事です。特にイソジンは乾いていくときに、その消毒効果を発揮するのです。イソジン→アルコールでなくてアルコール→イソジンの順番の方が、効果が高いのです。「そういえば、そんなことを言われたことがあったかも……」と思いますが、すっかり忘れていました。

 患者さんが高熱を発していて、敗血症が疑われる。なるべく早く抗生物質の投与を始めたい。という時に行う血液培養では「イソジンが乾くまでのんびり待ってなんかいられない!!」と思うのですが、不適切な皮膚消毒を行うことで皮膚常在菌によるコンタミを30から40%の確率で起こすことを考えると、早まる心を抑えて我慢しなくては……と思います。現に「イソジンが乾くまで待つ」ことを標準手技にしただけで、コンタミ率が3%だったスタディもあります。そんなに待たなくても乾いてしまう消毒剤を用いたら、コンタミ率が7%から3%に低下したという結果も出ています。

 この事実を知ってからA外来処置で皮膚消毒をするときは、乾かすのにウチワを使っています。自然乾燥に任せていると時間がかかってしまうからです。患者さんも慣れたもので、「他の患者さんも待ってるから、ボクやりますヨ。」とパタパタ扇いで下さいます。はやる心を少ーし我慢して、消毒液が乾くまで待つことを徹底するようにしてから、潰瘍や熱傷、小手術後の傷の治りが早くなったようです。