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HPVとは


HPVとは

ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)の略で、現在までにヒトでは皮膚に感染する型と粘膜に感染する型とで100種類以上の型が発見されています。このHPVの一部の型において子宮頸部がんの原因になることが判っています。

2008年、HPVが子宮頸がんの原因であることを突き止めたドイツがん研究センターのウイルス学者ハラルド・ツア・ハウゼン氏がノーベル医学生理学賞を受賞しています。

HPVはがん化との関連から、低リスク型HPVと高リスク型HPVとに分けられます。外陰部にできる良性のいぼ(尖圭コンジローマ)などは低リスク型HPVであり、がん化するリスクは低いと言われています。一方、高リスク型HPVに感染したからといって必ずしもがん化するわけではありません。たとえHPVに感染してもほとんどが一過性の感染であり、免疫力により自然に消失します。高リスク型HPVが長期間(平均で10年以上の長い期間)持続感染することによって子宮頸がんに進行する可能性が出てきますが、必ずしも全ての人ががんになるわけではありません。高リスク型HPVには、16、18、31、33、35、52、58など十数種類の型があります。

感染経路

HPVは性交渉により感染しますので、性的な接触の回数が多くなるほど感染の機会が増えることとなります。男性においては陰茎がんや前立腺がんなどとの関連が疑われていますが、はっきり判っていません。他の性感染症と同様にコンドームを使用することによりある程度予防は出来ます。

ワクチン

HPVに対するワクチンが開発されており、2006年6月にメルク社の4価ワクチン(Gardasil)が米国FDAに承認され欧米諸国では既に接種が行われています。
日本では2006年4月にグラクソ・スミスクライン社がHPV 16型、18型に対する2価ワクチン(Cervarix)の治験を開始、万有製薬が同年6月から16型、18型に尖圭コンジローマの原因となる6型、11型を加えた4価ワクチン(Gardasil)の治験を開始した状況であり、一般での接種は開始されていません。

なお、欧米諸国ではHPV 16型と18型の割合が多いのに対し、日本ではHPV 16型、18型に加えて52型、58型が多いと報告されており、これら異なる型に対して同様な効果が期待できるかどうか判っていません。HPVは性交渉により感染しますので、性交渉経験が無いうちにワクチン接種することが重要です。

細胞診検査とHPV検査

子宮頸がんの検診には細胞診とHPV検査があります。
細胞診は、子宮頸部の細胞を採取し、顕微鏡検査によりがんと関連した異常な細胞(異型細胞やがん細胞)の有無を調べる検査です。現在日本では細胞の状態により、以下のように分類されています(日母分類)が、2009年より欧米諸国で使用されている分類方法(ベセスダシステム)に変わることが決まっています。


I :正常である。
II :異常細胞を認めるが良性である。              
IIIa:軽度〜中等度異形成を想定する。
IIIb:高度異形成を想定する。
IV :上皮内がんを想定する。
V :浸潤がん(微小浸潤がんを含む)を想定する。


HPV検査も同様に子宮頸部の細胞を採取し、細胞内のHPVの遺伝子(DNA)の有無を調べる検査です。高リスクHPVに感染しているかどうかを調べる検査と、どの型のHPVに感染しているかを詳しく調べる検査があります。

これら検査の精度を上げるためには正しい検体採取(綿棒でなくブラシを用いる)とより良い検体処理が必要です。最近では液状細胞診という検体処理の方法が徐々に普及してきており、この方法を使用することで一度の検体採取により、細胞診とHPV検査の両方が実施できます。細胞診とHPV検査の併用によって検診の精度が100%近くに高められると言われています。米国の子宮頸がん検診のガイドラインでは、両検査とも陰性の場合、次回検診は3年後で良いと言われており、同時検査は子宮頸がんになるリスクの高い人の早期発見だけでなく、検査頻度を減らすなど、トータルとして医療費を削減する効果も期待されています。

【ベセスダシステム2001】
1.標本の種類
 標本作製法 直接塗抹法/液状検体法
 細胞採取器具 サイトピック/ヘラ/ブラシ/綿棒/その他

2.標本の適否
 適正
 不適正
  理由の記載

3.細胞診判定
 NILM(陰性) 微生物/その他の非腫瘍性所見

 扁平上皮系異常
 ASC-US (意義不明な異型扁平上皮細胞):軽度扁平上皮内病変疑い
 ASC-H (HSILを除外できない異型扁平上皮細胞):高度扁平上皮内病変疑い
 LSIL (軽度扁平上皮内病変):HPV感染/軽度異形成
 HSIL (高度扁平上皮内病変):中等度異形成/高度異形成/上皮内癌
 SCC (扁平上皮癌):扁平上皮癌

 腺系異常とその他の悪性腫瘍
 AGC (異型腺細胞):腺異型または腺癌疑い
 AIS (上皮内腺癌):上皮内腺癌
 Adenocarcinoma (腺癌):腺癌
 other (その他の悪性腫瘍):その他の悪性腫瘍

4.細胞所見

ベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診報告様式より

HPV検査陽性のとき

HPV感染のほとんどは一過性で感染者の免疫力により自然に消失しますが、まれに持続感染することがあり、子宮頸がんへの危険性が高まります。HPV検査を行い陽性判定が出た場合、異型細胞が出現しないか、高リスクHPVの陽性が続くかなどを6〜12ヶ月ごとに確認することをお奨めします。定期的に検査することはとても重要なことです。最寄りの産婦人科もしくは子宮がん検診を実施している健診センターなどで相談してください。

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