医療関係者向けのページです

下痢と感染症


それ自体で死に至ることはありませんが、これを主徴とする原因(疾患)を探ることをおこたると、適切な処置を施すことが出来ず、生命の危険を招くこととなります。

下痢の病態生理としては,
 1.腸壁における水分吸収障害
 2.腸壁よりの異常な水分分泌の増加
 3.腸運動亢進による腸内容の短時間の腸通過

をあげることができます。
まず、原因疾患の探索を行ない、その治療を行なうことが重要です。

原因による分類

 1.腸管感染症
 2.暴飲暴食または不消化物の摂取
 3.中毒
 4.抗生物質使用に起因する下痢
 5.アレルギー性下痢(腸性紫斑病も含む)
 6.虫垂炎,傍直腸潰瘍に起因する下痢
 7.急性膵炎
 8.消化管大量出血
 9.寒冷性下痢
10.神経性下痢
11.放射性過剰照射性下痢
12.腸管外感染症に随伴する下痢
13.腸間膜動脈循環不全症または虚血性大腸炎
14.エンドトキシンショック
15.腸重積症
16.慢性下痢をきたす疾患の急性悪化

型による分類

・急性胃腸炎型
主として胃および小腸に病変が存在するもので胃痛(上腹部痛)、臍を中心とした腹痛、それに悪気・嘔吐を伴います。下痢便は量が多く、水様性です。

・急性大腸炎型
下腹部が痛み、高熱を発することが多く、裏急後重(しぶり腹)を示し、時に膿粘血便をみます。なお、通常胃痛(上腹部痛)および悪心・嘔吐を伴うことはありません。

腸管感染症に起因すると思われる下痢の場合

■注 意
ここに載せた情報は医療行為を支援するものではなく、あくまでも自覚症状に基づく自己診断のためのものです。
従って、最終的な診断は受診されている医師等から受け、その指示を守るようにして下さい。
尚、ここの情報による不利益等には責任を負いかねますので、あしからずご了承下さい。

救急処置

1.腹痛対策
原因疾患の確定診断を行うと同時に、鎮痛剤としてブスコパン、コリオパン、ダイパン等の薬剤を投与します。

2.悪心・嘔吐対策
嘔吐が激しい場合には、誤嚥性肺炎、窒息死の可能性があるので、仰臥位を避ける頭位や体位を患者にとらせ、気道を確保する必要があります。
制吐剤として、フェノバルビタール、メトクロプラミド、アトロピン等の薬剤の投与も考慮します。

3.脱水状態または血圧低下(前ショック状態)対策
原因と病態に対応した的確な治療を行うことが基本となります。
特に小児においては脱水状態に陥りやすいので、このような状態が認められたときは、乳酸化リンゲルによる水分の補給と、電解質の是正を目的とした補液を行います。
 
4.原因疾患対策
病原体による腸管感染症の場合には、その種類と程度により抗生物質を選択します。また、適正な時期を選んで投与する必要がありますが、これは原因菌が毒素を産出する場合に、殺菌(溶菌)によって毒素が腸管内に放出され、さらに重篤となる危険が増大するからです。

5.下痢対策
強力な止痢剤は腸管の自浄作用を阻害し、病原体及び毒素の排出を遅らせるので、やむをえず使用する場合は整腸剤の投与にとどめます。