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クラミジア・淋菌感染の診断のために

−愛知医科大学 名誉教授 野口 昌良 著−
クラミジア・トラコマティス感染症の症状
クラミジアまたは淋菌に女性が感染した場合、感染初期には、まったく症状が現れない。従って、治療をする機会がないことになり、感染したまま放置されることとなる。
 女性性器は男性とは解剖学的に異なり、子宮頚管に感染したクラミジアは頚管の円柱上皮細胞において増殖し、そのまま上行性に子宮内から卵管を経由して腹腔内へ侵入していく。
 その結果、卵管において発症した卵管狭窄は子宮外妊娠の原因となり、骨盤内に拡がったクラミジアは子宮付属器炎や骨盤腹膜炎を引き起こす。さらに、感染機会から無症状のため放置された結果、卵管采部の癒着や卵管周囲の癒着、最終的には卵管閉塞がおこり卵管性不妊症を誘発することになる。
 骨盤腹膜炎を発症した時点では、下腹痛や性交痛を自覚するようになるが、クラミジア感染がさらに上腹部に波及したときは、急性肝臓周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)を発症し、初感染時の無自覚性感染とは大いに異なる激しい症状を示す。
(表1)(図1)





このようにクラミジア感染症や淋菌感染症は、感染初期に症状がなく、初期治療の機会がないまま放置されると、極めて重篤な病態を引き起こすことになる。
 なによりも問題となることが、この感染初期の無自覚性感染にある。
 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によれば10人に1人の青年期女性がクラミジアに感染しており、毎年65万人の新規淋菌感染者が出ているという。また、本邦においても、15歳〜24歳までの男女に100万人を越すクラミジア感染者の存在が明らかにされていることから、無症候性感染者の発見と早期治療を目指したスクリーニング検査の定期的実施が問題解決のためには必要であると言わざるを ない。さらに若年者の場合、複数のパートナーが存在することも多いため、より感染を広げる可能性が高い。この点も踏まえて、スクリーニング検査の定期的実施が望まれる。(表2)(図2)
性器クラミジア感染症の全国疫学調査(10万人・年対罹患率 2002年度調査)女性/男性比
性器クラミジア感染症の流行度 女性の罹患率(10万人・年対罹患率)