クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の鑑別診断
遺伝子検出キット「BD マックス™ CDIFF」が保険収載
-抗菌薬関連下痢症・腸炎の主要原因-

2019/04/15
※プレスリリースは発表時のものを掲示しております。発表後、内容に変更がある場合がありますのでご注意ください。


日本BD(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長:阿知波達雄) は「BD マックス™ CDIFF」によるクロストリジオイデス・ディフィシルのトキシンB遺伝子検出が2019年4月1日より保険適用となりましたことをお知らせいたします。

「BD マックス™ CDIFF」はクロストリジオイデス・ディフィシル菌(CD)が産生する毒素の内、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の鑑別診断に重要なトキシンB遺伝子を検出する試薬で、リアルタイムPCR法により遺伝子(DNA)の抽出から増幅、検出までを全自動で迅速に行う「BD マックス™」専用のキットです。CDはヒトに感染して下痢症や腸炎を引き起こす他、芽胞を形成してアルコールや乾燥、熱に抵抗性を獲得すると、一般環境中に長く生存できるようになります。そのため、院内感染の原因ともなることから、精度が高く迅速な検査法が求められてきました。BD マックス™ CDIFFはCDのトキシンB遺伝子検出の検査として、国内で初めて保険適用されたものです。

※クロストリジウム・ディフィシルは、2016年にクロストリジオイデス・ディフィシルに名称変更されました*1

重症化すると死に至ることもあるCDI(クロストリジオイデス・ディフィシル感染症)
人の腸内には数百種類、千兆個もの細菌がいますが、抗菌薬の服用でこれらの腸内細菌のバランスが崩れると、特定の菌が異常に増加する菌交代症が起こることがあります。CDIはこうした菌交代症の代表的なもので、抗菌薬関連下痢症の原因の20~30%を占めています。また、高齢者に多く、手術後や免疫抑制剤を使用している際など抵抗力が落ちているときに発症しやすいと言われています。CDIは年間10,000患者あたり7.4人の罹患者がおり*2、主な症状は下痢や粘性の便、吐き気、発熱などで、重症化すると死に至ることもあります。


クロストリジウム・ディフィシル遺伝子検査の運用フローチャート*3
CDI診断のための検査項目の概要
CDI診断には、患者さんの便を検体として、イムノクロマト法などの迅速診断キットでCD抗原検査(GDH検査)とCDトキシン検査が行われます。

これら両方の検査が陽性である場合にはCDIと診断されますが、CD抗原検査が陽性でCDトキシン検査が陰性の場合は、さらに感度の高いトキシン遺伝子検査(NAAT検査)が推奨されています。

この度、保険収載された「BD マックス™ CDIFF」遺伝子検出キットは、毒素産生CD検出の基準的方法である毒素産生性培養検査(Toxigenic Culture)と同等の感度、特異度があり、より短い時間(約3時間)で測定できます。

保険収載の内容
区分E3(新項目)
測定項目クロストリジオイデス・ディフィシルのトキシンB遺伝子検出
測定方法リアルタイムPCR法
使用目的糞便中のClostridium difficileトキシンBのDNA検出(Clostridium difficile感染の診断補助)
保険点数450点

留意事項:

ア クロストリジオイデス・ディフィシルのトキシンB遺伝子検出は、以下の(イ)~(ハ)をいずれも満たす入院患者に対して実施した場合に限り、区分番号「D023」微生物核酸同定・定量検査の「12」ブドウ球菌メチシリン耐性遺伝子検出の所定点数に準じて算定する。
(イ) Clostridium difficile(CD)感染症を疑う場合であって、クロストリジウム・ディフィシル抗原定性検査において、CD抗原陽性かつCDトキシン陰性であること。
(ロ) 2歳以上でBristol Stool Scale 5以上の下痢症状があること。
(ハ) 24 時間以内に3回以上、又は平常時より多い便回数があること。
イ 本検査は、関連学会の定める指針に基づき実施した場合に限り算定できる。
ウ 本検査を行う場合にあっては、区分番号「D026」の「注3」に規定する検体検査管理加算(Ⅱ)、(Ⅲ)又は(Ⅳ)のいずれか及び区分番号「A234-2」の「1」感染防止対策加算1の施設基準を届け出ている保険医療機関で実施した場合に限り算定できる。
エ 本検査を行う場合、下痢症状並びに本検査を行う前のCD抗原およびCDトキシンの検査結果について診療録に記載すること。
オ 本検査と区分番号「D023」微生物核酸同定・定量検査の「15」細菌核酸・薬剤耐性遺伝子同時検出を併せて測定した場合には、それぞれ算定できる。

なお、本キットは2016年1月に体外診断用医薬品の承認を得ています。
販売名:BD マックス CDIFF (製造販売承認番号22800EZX00002000)

          左:「BD マックス™」全自動核酸抽出増幅検査システム           右:「BD マックス™ CDIFF」 CDトキシンB遺伝子検出キット

BDは、検査の迅速化と精度向上を図ることにより、適切な治療の促進に貢献するとともに、患者さんのQOLの向上や入院期間の短縮の実現に寄与してまいります。

*1 Lawson P. A., Citron D. M., Tyrrell K. L., Finegold S. M. (2016). Reclassification of Clostridium difficile as Clostridioides difficile (Hall and O'Toole 1935) Prevot 1938. Anaerobe 40, 95–99. 10.1016/j.anaerobe.2016.06.008
*2 Kato, H, et al.Clostridioides (Clostridium) difficile infection burden in Japan: A multicenter prospective study, Anaerobe, 2019 Mar 12
*3 感染症領域新規検査検討委員会. “クロストリジウム・ディフィシル遺伝子検査の運用フローチャート”.日本臨床微生物学会. 2017.http://www.jscm.org/m-info/182_2.pdf, (参照2017-7-14)
中医協 総-1-2 31.3.27