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針刺し損傷/日本の現状 Q&A

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針刺し損傷による感染率は?

針刺し損傷による感染率は?

● HIV 0.3%
● HCV 1.8%
● HBV 1-62%

CDC MMWR June29,2001/Vol.50/No.RR-11


日本で針刺し損傷によって感染した医療従事者はいますか?

日本で針刺し損傷によって感染した医療従事者はいますか?

はい。

● HBVに関してはB型ワクチンの接種や免疫グロブリンなどによって最近急激に減少しています。

● HCVに関しては統計の始まった平成5年度から毎年多くの医療従事者がHCV感染労災認定されており、平成11年までの7年間で377名(医師39名、看護婦307名、臨床検査技師9名、その他22名)認定されています。

● HIVに関しては、東京都内の大学病院で清掃作業中の男性が針刺し損傷でHIVに感染し、エイズを発症して死亡したと疑われる事例報告について、厚生労働省から公表されました。

<関連記事>
病院の清掃中に針刺してエイズ感染?男性死亡(2001年9月8日 読売新聞、他)
東京都内の大学病院の清掃作業員(57歳男性)が、体調不良で今年5月に受診した結果、HIV感染しエイズを発症していることが判明。感染経路については、「病院の手術室で清掃中に何回も注射針などで針刺しがあった」と医師に話していたが、数日後に死亡

針刺し損傷訴訟(1999年3月9日 朝日新聞-大阪)
「新人時代(准看護婦)に患者の血液検査中、指に刺さった注射針からC型肝炎に感染したのは病院が十分な指導をしなかったからだ」として、病院を経営する医療法人を相手取り総額約3000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は、病院側に約2740万円の支払を命じる判決を言い渡した。→病院側は控訴し2000年4月に和解


日本で針刺し事故によって感染した医療従事者の訴訟例はありますか?

日本で針刺し事故によって感染した医療従事者の訴訟例はありますか?

はい。

最終的には和解が成立しましたが、1999年3月針刺し損傷によってHCV感染したのは病院側が十分な指導をしなかったからだとして病院を経営する医療法人を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は病院側に約2740万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
日本醫事新報No.3954(2000.2.5)


日本での針刺し事故の実態は?

日本での針刺し事故の実態は?

● 1996〜1999年度(3年間)の厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業におけるエイズ拠点病院針刺し・切創調査では、3年間でエイズ拠点病院延べ608施設から15,119件(解析可能データは11,798件)の針刺し切創データを集積し、下記が報告されています。

* 1年間に100病床あたり4件の頻度で針刺し切創が発生していた
* HIV陽性患者での針刺し切創は88件(0.6%)であり、感染例は0件
* HCV陽性患者での針刺し切創7,708件(51%)であり、感染発症例は28件
* HBV陽性患者での針刺し切創は1,862件(12%)であり、感染発症は判定不可
* 原因器材は、ディスポ注射器が29%、翼状針22%、縫合針11%、静脈留置カテーテル6%の順で多かった
* 入院HCV罹患率を指標として損傷の報告率を推定した結果、報告される損傷の割合は全体の8割程度であり、1998年は16%〜22%と推定される
* 1病院では、針刺し損傷防止機構のついた鋭利器材(安全器材)の導入によって、針刺し損傷が1/10に減少していた

● この報告の要旨には、「日本の医療現場でも、リキャップせずに廃棄できるシステムと防御装置の付いた器材を導入することが緊急の課題と思われた」と明記されいます。

平成11年度 厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業 HIV感染症に関する臨床研究針刺し事故の現状と対策:1996〜1998年(3年間)のエイズ拠点病院における針刺し・切創事故調査結果より


針刺し損傷対策として有効な対策は?

針刺し損傷対策として有効な対策は?

● 2000年3月CDCは、使用された器材の種類や操作方法にもよるが62‐88%の針刺し切創が安全器材によって防止可能であると推定しています。

● このようなエビデンスに基づき、2001年4月18日から施行されている米国連邦法Needlestick Safety and Prevention Act(針刺し安全防止連邦法)では、市販されている安全器材の評価および導入の義務が雇用者に課せられています。


安全器材とは何ですか?

安全器材とは何ですか?

米国労働省のOSHA ;Occupational Safety & Health Administration(労働安全衛生管理局)のBloodborne Pathogen Standards(血液媒介病原体基準)において、安全器材は「工学的に針刺し損傷防止機構のついた鋭利器材やニードルレスシステムなどの器材」と定義付けされています。


安全器材の有効性について教えて下さい。

安全器材の有効性について教えて下さい。

10万本あたりの事故件数
Data Source;Eleventh Annual Scientific Meeting 2001 SHEA , Toronto, Canada

安全器材の有効性は、器材の種類や操作方法によって異なります。「ニードルレスシステム」の場合、金属針を使用しない器材と定義されているため、患者への使用前から廃棄にいたる全ての針刺しを防止する器材となり得ます。一方、「針刺し損傷防止機構のついた鋭利器材」の場合、その防止機構や操作方法のよって損傷防止効果が大きく異なります。

「針刺し損傷防止機構付き静脈留置カテーテルの評価」

<グラフ参照>
● 従来器材 (安全機構のついていない静脈留置カテーテル)
    93年6月〜96年8月 848,958本使用中、針刺し56件
● A社安全器材 (針刺し損傷防止機構付き静脈留置カテーテル)
    97年8月〜98年12月 274,382本使用中、針刺し13件
● インサイトオートガード (針刺し損傷防止機構付き静脈留置カテーテル)
    99年2月〜00年7月 331,516本使用中、針刺し1件


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