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第91回日本感染症学会総会・学術講演会/第65回日本化学療法学会学術集会 合同学会
ランチョンセミナー14

開催地 東京
会場 第6会場 京王プラザ(新宿)南館4F 錦
開催日時 2017年04月07日 12:10〜13:10
司会

栁原 克紀 先生

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
病態解析・診断学分野(臨床検査医学) 教授

MRSAアクティブサーベイランスの医療経済効果とは?

五十嵐 中 先生

東京大学大学院 薬学系研究科医薬政策学 特任准教授

 高齢化などにともない医療費が増大する一方で、「とてもよく効くが、とても高い」新薬が次々に上市され、医療制度をどのように維持していくかが本格的に議論されるようになった。
 この流れの中で注目されているのが、くすりの費用対効果評価・効率性評価である。費用対効果の肝は「効き目とお金の両者を評価すること」であり、単に医療費削減のみを目指すものではない。
 治療は高額、予防や検診は低額、だから予防・検診は当然に効率的…という議論はよく見かける。しかし、予防の恩恵を受けられるのは「予防しなければ疾患にかかっていた。予防をしたのでかからずに済んだ」人に限定される。有病率・罹患率の低い疾患に対して広く予防介入を実施すると「予防してもしなくても、疾患にはかからなかった」人が多くなる分、予防の効率は落ちる。
 また検診の場合も、「検診で見つかっても、なすすべがない」病気や「症状が出てくるまで放っておいても、十分に対応できる」病気であれば、早く見つけるメリットは薄くなる。
 正しい意味での費用対効果をはかる際には、効果のものさしも重要である。検診を強化すれば、疾患発見者数が増えるのはある意味必然である。発見者数の増加のみならず、発見者の増加を通して、疾患死亡の減少や生命予後の改善のような「硬い」アウトカムの改善を測ることが、費用対効果の評価の際には重要である。
 これまで承認されればほぼ自動的に保険で賄われてきた医薬品でも、2016年4月から、費用対効果のデータが試行的に活用されるようになった。「自動的」にはカバーされない予防接種や検診、さらには禁煙治療のような領域では、むしろ医薬品に先駆けて、2000年代後半からさまざまな形で費用対効果のデータが活用されてきた。
 今回は、MRSAアクティブサーベイランスの費用対効果を、検査費用の増大・MRSA感染治療に関わる医療費削減・MRSA罹患減にともなう死亡回避の観点から評価した分析を試みた。
 単純に「アクティブサーベイランス導入による検査費用増大」と「MRSA感染治療に関わる医療費削減」の大小比較を行うことは、費用対効果の評価ではない。実際入院患者1万人で評価した際に、前者(検査費用増大)は850万円・後者 (MRSA医療費削減)は430万円で、総額では420万円の費用増大となっている。
 正しい費用対効果評価は、この「420万円増加」に見合った健康アウトカム改善が得られるかどうかを評価することである。1万人の入院患者に対して、MRSAによる感染発症減少は7.8件で、1.8人の死亡を回避できる。1人死亡回避あたりの増分費用効果比ICERは420万円÷1.8人=238万円となるが、MRSA患者の予後(期待余命)を総合的に考慮した場合、費用対効果の良し悪しの基準となる閾値 (健康な1年・1QALYあたり500-600万円)は十分に下回り、費用対効果は良好と考えられる。
 本セッションでは、その他の種々の予防・検診戦略について、さまざまな介入の費用対効果分析の結果とその政策応用のかたちを概説する。




※本セミナーは整理券制です。
配布日時 4月7日(金)8:00~11:40
配布場所 京王プラザホテル 南館4F ホワイエ
整理券はセミナー開始5分後に無効になります。

共催:第91回日本感染症学会総会・学術講演会・第65回日本化学療法学会学術集会 / 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社