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第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会
第60回日本感染症学会中日本地方会学術集会
第65回日本化学療法学会西日本支部総会
ランチョンセミナー7

開催地 長崎
会場 第二会場(長崎ブリックホール 3F 国際会議場)
開催日時 2017年10月28日 12:00〜12:50
備考 ランチョンセミナーは整理券制です。詳細は学会ホームページをご確認下さい。

共催:第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会/第60回日本感染症学会中日本地方会学術集会/
   第65回日本化学療法学会西日本支部共催総会/日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

AMR対策における微生物検査室の重要性

司会:賀来 満夫 先生 東北大学大学院医学系研究科内科 病態学講座感染制御・検査診断学分野 教授
演者:栁原 克紀 先生 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野(臨床検査医学) 教授

2016年4月に薬剤耐性対策アクションプランが発表された。その内容は大きく6項目からなるが、それぞれに達成目標が明記されている。各々の達成目標が達成可能かどうかは議論があるが、これら達成目標を支援するのが微生物検査室であり、今後その役割がますます重要になる。
薬剤耐性対策アクションプランにおいて、病原微生物の同定および感受性試験はきわめて大切である。しかし現状では報告までに4~5日かかっていることから、これをいかに短縮していくかが求められている。新規迅速機器が普及しはじめており、これらの紹介とともに、その活用法についても考えてみたい。
質量分析機器は2010年より国内でも導入され、この1~2年でようやく普及し始めてきた。これにより同定検査報告は格段に速くなり、特に迅速な報告が求められる血液培養の場合は、培養陽性後1時間程度で同定菌名を確定、報告することができるようになった。しかしながら薬剤感受性試験は従来型機器で実施されるため、培養陽性後さらに2日程度の時間を要しているのが実態である。特に質量分析機器を導入した施設の医師からは薬剤感受性試験の迅速化を要望する声が高まってきている。
そのような背景の中、薬剤感受性結果を迅速に報告できる機器の開発が進められ、普及してきている。これによりMRSAやESBL等の耐性菌は測定開始から5時間~6時間程度で耐性報告が報告できるようになり、また「感性」報告も従来機器では、測定開始から24時間~48時間かかっていたものが、10時間~16時間に短縮化され、抗菌薬適正使用のためのde-escalationも従来よりも早く行なうことが可能になってきている。
一方、あらたな潮流として遺伝子機器の自動化もある。遺伝子検査機器の保険適応により、耐性遺伝子の確定や、血液培養検査報告の迅速化が今後加速していくものと思われる。MRSA感染により医療費は3.5%、在院日数は約3.0%、死亡率が約3.1%増加するとの報告もあり、MRSAの院内感染が患者のヘルスケアアウトカム、更には医療費を押し上げている事が証明されている。アクティブサーベイランスを積極的に行い、院内伝播を抑止していくことが、AMR対策でも必要になるであろう。講演では、最新遺伝子機器を用いた、アクティブサーベイランスの有用性についても長崎大学でのデータも示しながら述べたい。