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第45回 日本集中治療医学会学術集会 教育セミナー LS4

開催地 千葉
会場 第 5 会場(幕張メッセ 国際会議場 3F 301)
開催日時 2018年02月21日 12:30〜13:30
備考 教育セミナー(ランチョン)の参加には整理券が必要です
整理券は各参加受付付近に設置した発券機にて配布します。
整理券配布日時:2 月 21 日(水) 7:50 ~ 12:00
参加受付は下記 4 か所です。
● 幕張メッセ国際会議場 1F ロビー ● 幕張メッセ国際展示場 2F ロビー
● ホテルニューオータニ幕張 2F ロビー ● ホテル ザ・マンハッタン 2F ロビー
※ 整理券は当日分のみ先着順で配布します。
※ 教育セミナーは整理券をお持ちの方より優先的にご入場いただきますが、
整理券はセミナー開始をもって 無効となりますので、ご注意ください。

共催:第 45 回 日本集中治療医学会学術集会/日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

集中治療領域における多剤耐性菌対応

司会:林 淑朗 先生 亀田総合病院 集中治療科 部長
演者:原田 壮平 先生 公益財団法人がん研究会有明病院 感染症科 部長

 多剤耐性菌の増加は以前から問題視されていたが、2000年以降、それまで主な問題であった多剤耐性グラム陽性球菌に加えて多剤耐性グラム陰性桿菌の拡散が世界的に進行した。また、かつては医療機関内に限定された問題であると認識されていた多剤耐性菌の拡散が市中においても認識されるようになってきている。その一方で、多剤耐性菌に有効な新規抗菌薬の開発は停滞している。
 日本は比較的、多剤耐性グラム陰性桿菌の分離頻度が低い国ではあるが、一部の耐性菌は持続的に増加傾向を示しており、また、日本独自の多剤耐性菌も報告されている。日本の国家としての多剤耐性菌対策は世界に遅れをとっていたが、2016年に「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」により、2020年までに実施すべき事項をまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定された。この中では成果指標として抗菌薬使用量の削減や主要病原細菌の耐性率の低下が具体的な数値目標として掲げられている。
集中治療領域は広域抗菌薬の投与に伴い多剤耐性菌が検出されるリスクが高く、また、集中治療室は院内の多部門の患者を収容しているため、集中治療室での多剤耐性菌のアウトブレイクは対応が遅れると病院全体にわたるアウトブレイクの端緒となりうる。
集中治療室の多剤耐性菌対策の根幹となるのは全ての患者に対して行う手指衛生・標準予防策であるが、多剤耐性菌が検出された患者に対してはより強化された拡散防止策である接触予防策が適用される。一部の多剤耐性菌は通常の培養検査・薬剤感受性試験では検出できない場合があるため、通常と異なる薬剤感受性パターンを示す菌株の精査や高リスク患者の積極的監視培養の施行においては微生物検査室との連携が欠かせない。近年、内視鏡などの医療器具を介した多剤耐性菌アウトブレイクや、多剤耐性菌の分離頻度の高い国での入院歴のある患者がきっかけとなった多剤耐性菌アウトブレイクが多く報告されており、これらへの対応も求められる。
 多剤耐性グラム陰性桿菌感染症に有効な抗菌薬の選択肢は限られている。コリスチン、チゲサイクリンが日本でも使用できるようになったが、いずれの薬剤も単剤での治療の有効性には不安がある。ベータ・ラクタム薬の長時間投与や多剤併用療法にも期待が持たれているが、どのような状況でこれらを適用すべきかについては議論のあるところである。なお、海外では多剤耐性グラム陰性桿菌に有効な新薬も上市されており、今後の日本における耐性菌の分離状況によってはこれらの薬剤の導入も望まれる。一方で、不要な抗菌薬使用を減らして多剤耐性菌の出現を抑制することも重要である。多剤耐性菌時代の集中治療医には抗菌薬を適切に「使用すること」と「使用しないこと」の両方が求められている。