BD フェニックス™「グラム陰性菌用CPOパネル」新発売
-感染症アウトブレイクの原因となる耐性菌を速やかに推定-

2019/05/15
※プレスリリースは発表時のものを掲示しております。発表後、内容に変更がある場合がありますのでご注意ください。


日本BD(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 本社:東京都港区赤坂、代表取締役社長:阿知波達雄)は感染症アウトブレイクの原因となることで世界的な脅威となっているカルバペネム分解酵素(カルバペネマーゼ)産生菌(CPO)の推定と薬剤感受性試験を同時に行い、検査時間を大幅に短縮することで適切な薬剤選択と迅速な感染管理に貢献するBD フェニックス™「グラム陰性菌用CPOパネル」を5月15日に発売いたします。

グラム陰性菌には大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌などがあり、尿路感染症や敗血症、肺炎などを起こします。また、グラム陰性菌による感染症の治療において最も重要な抗菌薬となるメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬が効かない耐性菌があり、中でも従来の検査機器では検出が難しかったカルバペネマーゼ産生菌の存在は、医療関連感染の大きな脅威となっていました。


CPO推定タイムライン
「グラム陰性菌用CPOパネル」は、細菌の同定と薬剤感受性試験を全自動で行う BD フェニックス システム専用パネルで、従来の細菌の同定と薬剤感受性試験に加え、カルバペネマーゼ産生菌(CPO)の推定を同時に検査できる国内初の試薬です。

本試薬は、カルパペネマーゼ産生菌(CPO)推定までの検査時間をこれまでの1/5~1/8となる最短6時間*1 に短縮しました。薬剤感受性試験で測定可能な薬剤は最大24剤で、今年1月に承認されたセフェム系抗菌薬であるタゾバクタムナトリウム/セフトロザン硫酸塩(製品名:ザバクサ)も含まれます。

四学会連携提案に応える
2014年3月に国内でカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌の集団感染がおきたことをきっかけに、2014年9月にはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症は全て届け出ることが義務付けられました*2。しかしながら、これまでの検査機器ではカルバペネムに感性があると判断されるぎりぎりの領域(メロペネムのMIC 0.25~1㎍/L)に検出の難しいカルバペネマーゼを産生する菌が隠れていることが知られており、これらカルバペネマーゼ産生菌(CPO)をどう捉えていくかが大きな課題となっていました。

そこで、日本化学療法学会、日本感染症学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会の四学会は「カルバペネムに耐性化傾向を示す腸内細菌科細菌の問題-カルバペネマーゼ産生菌を対象とした感染対策の重要性-」*3 を連携提案としてまとめ、感受性試験のブレイクポイントをEUCAST(欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会)が推奨するメロペネム 0.125㎍/Lとする必要性を示しました。

BD フェニックス グラム陰性菌用CPOパネルは、この四学会連携提案に対応し、メロペネムのMICを0.125㎍/Lとしており、カルバペネマーゼ産生菌(CPO)を高い精度で検出して適切な治療の早期開始を可能にするとともに、見落としによる感染拡大のリスクを抑えます。

BDは革新的技術で、感染症のスクリーニングや検査、診断の迅速化に貢献する様々な製品の開発に取り組むとともに、感染をモニタリング・追跡するサーベイランスシステムを提供することで、適切な治療の促進と薬剤耐性菌のアウトブレイク抑制に貢献してまいります。

*1 腸内細菌科細菌、アシネトバクターは最短で6時間、シュードモナス属では最短11時間でカルバペネマーゼ産生を推定します。
*2 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症は5類全数把握対象疾患となっている。5類全数把握感染症とは、感染症を診断した医師が7日以内に都道府県知事等に届けることが義務付けられている疾患のこと。
*3 四学会連携提案 カルバペネムに耐性化傾向を示す腸内細菌科細菌の問題 (2017) — カルバペネマーゼ産生菌を対象とした感染対策の重要性 — http://www.jscm.org/m-info/189.pdf

【製品概要】

      BD フェニックス™ M50全自動同定感受性検査システム                       BD フェニックス™ グラム陰性菌用CPOパネル
販売名:BD フェニックスM50
製造販売届出番号:07B1X00003000159
販売名:BD フェニックス
製造販売承認番号:21400AMY00156000
製造販売届出番号:07A2X00012000301

【用語集】
カルバペネマーゼ産生菌(CPO)
カルバペネマーゼ産生菌(CPO)は、抗菌薬カルバペネムを分解する酵素カルバペネマーゼを産生し、カルバペネム等に耐性を持つ薬剤耐性菌。

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症
カルベネペネム耐性腸内細菌科細菌感染症は、メロペネムなどのカルバペネム系薬剤および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌科細菌による感染症。組織や体液、便などの直接接触や皮膚の接触によって広がり、湿潤環境で長期間生存できることから、急速に院内感染を広げる。尿路感染症や敗血症、肺炎などを起こすが、CREによる有効な抗菌薬が限られているため、適切な治療の遅れが致命率を高める要因となっている。これらのうち、CPOは特に多剤耐性傾向が強く、院内感染事例も多いことから、その蔓延が警戒されている。2014年9月に5類全数把握疾患と指定され、全て届け出ることが義務付けられた。

メロペネム MIC
メロペネムはカルバペネム系抗菌薬で、細菌の細胞壁の合成を阻害して殺菌作用を示す。呼吸器感染症、血液感染症、皮膚感染症、尿路感染症、発熱性好中球減少症、化膿性髄膜炎など広い範囲の細菌感染症の治療に使用される。
MICはMinimum Inhibitory Concentration(最小発育阻止濃度)の略。細菌学的に薬剤に対する感性があるか、耐性であるかを判定し、投与される抗菌薬を選択する上で重要な指標の一つとなる。

EUCAST
EUCASTはThe European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testingの略で、欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会を指す。