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静脈炎について

静脈炎は静脈壁内膜の炎症であり、化学的静脈炎・機械的静脈炎・細菌性静脈炎に分類されます。 【徴候および症状】 疼痛/圧痛・紅斑/発赤・腫脹/浮腫・熱感・赤い索条(線条)・排膿 など

1.化学的静脈炎

1)最大の要因は、輸液剤のpH値です。

●正常のpH値は7.35-7.45ですが、酸性やアルカリ性の強い薬剤を注入すると内膜損傷が起こりやすくなります。

PH値 その影響 主な薬剤
<4.1  静脈炎発生リスク↑  ボスミン2.3−5.0、バンコマイシン2.5−4.5、
ペルサンチン2.5−3、プリンペラン2.5−4.5、
モルヒネ2.5−5.0、ハイカリック3.5−4.5、
ソリタT3/T3G 3.5−6.5、ミリスロール3.5−6.0 
<7.35  酸性  同上 
7.35-7.45  正常血清   
>7.45  アルカリ性  アレビアチン12、アシクロビル10.7−11.7、ソルダクトン9−10、アミノフィリン8−10、ラシックス8.6−9.6、メイロン7.6−8.6 
>8  静脈炎発生リスク↑  同上 

2)もう一つの要因は、輸液剤の浸透圧(重量オスモル濃度)です。

●浸透圧は水1kg当たりの溶解物の濃度ですが、水に溶けている粒子の数だと考えた場合は重さによって測定され、重量オスモル濃度としてmOsm/kg(ミリオスモルパーキログラム)で表現されます。重量オスモル濃度が高いほど内膜損傷が起きる危険性が高くなります。
●本邦では通常、生理食塩液に対する比:浸透圧比で表されています。

重量オスモル濃度
mOsm/kg
内膜損傷危険 主な薬剤
※本邦では生理食塩液に対する比:浸透圧比で表される
高張液  >600
(>1.95※) 
高  アレビアチン約29※、メイロン約5※、KCL約7※、TPN 1500mOsm/kg以上/約4-8※ 
高張液  450-600
(1.46-1.95※) 
中   
高張液  340-450
(1.10-1.46※) 
低   
等張液  240-340
(0.78-1.10※) 
  生理食塩水308(1.0※)、5%ブドウ糖278 
低張液  <240
(<0.78※) 
  滅菌水0 
薬剤の浸透圧値は科学的化合物や溶媒により様々であり、稀釈液により最終浸透圧値は等張液に近づけることができます。混合した輸液の最終pHと浸透圧を考えることが、静脈炎の予防上重要です。

2.機械的静脈炎

原因は物理的要因(非感染性)です。屈曲部にカテーテルを留置したり、不用意に動かしたり、カテーテル固定が確実でない時に、カテーテルが静脈内で動くことで血管内膜に損傷が生じます。

3.細菌性静脈炎

刺入部位に細菌や真菌が侵入したことに起因します。原因は挿入前後および挿入中に刺入部位が汚染されたことであり、不十分な手洗い・滅菌法の破綻・消毒薬の不適切な準備や適用・不適切なドレッシング・使用したカテーテルが準備段階や挿入時またはケア中に汚染された場合や、挿入時に同一のスタイレットやカテーテルを複数回使用した場合などが挙げられます。