医療関係者向けのページです

CDCワークブックに関する情報


序文

針刺し(needlestick)およびその他の鋭利器材に関連した損傷による血液媒介病原体への職業曝露は重大な問題であるが、それらは防止できることも少なくない。米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Preventions:CDC)の推計によると、毎年、病院の医療従事者の間では、針刺しおよびその他の鋭利器材損傷が385,000件発生する(1)。

その他の医療を提供する現場、たとえばナーシング・ホーム、診療所、救急医療を提供する場、および個人の住宅でもこれに似た損傷が発生している。主として鋭利器材損傷(sharps injuries)は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、およびHIVへの職業上の感染に関連しているが、その他20 以上の病原体の感染にも関与する。


【あなたが実行する際にこのワークブックより得られる主な支援事項】

● あなたの施設における鋭利器材損傷の防止計画を査定します
● あなたの施設における防止計画の作成と活動の実行について文書化します
● あなたの施設の防止のための介入の効果を評価します

プログラムの計画の全体像

鋭利器材損傷の効果的な防止プログラムは、医療従事者を針刺しおよびその他の鋭利器材損傷から守る事業の一環として行われなければならない。プログラムの計画は、既存の業務改善、感染管理および安全対策のプログラムを統一したものである。

それは多くの優れた医療機関が採用しつつあるアプローチ方法であり、連続的な品質改善のモデルに基づいている。このモデルはいろいろな方法で説明可能であるが、基本となっている概念は、高品質な製品とサービスを提供するためのすべてのプロセスを絶えず改善するための系統的で施設全体による努力である。

さらにこのプログラムの計画は、防止のための介入を制御のための方策の階層化に基づき優先順位をつけるという産業衛生の概念も参考としている。計画の2つの重点は以下の通りである。

■鋭利器材損傷を防止するプログラムを開発・実施するための組織化のステップ:これには、多くの専門分野にわたる人材による作業部会の設置に始まる一連の経営管理側的・組織的な活動が含まれる。これらのステップは他の連続的な品質改良モデルと両立するものであり、基礎評価と実施計画の作成における優先順位の決定を必要とする。必要に応じて、計画の効果は連続的評価により修正される

■運用の工程:この活動は鋭利器材損傷防止プログラムの中核をなし、安全意識の創造、損傷の報告義務、器材の選択と評価を含む


提供される情報
このワークブックは組織化のステップと運用の工程を説明する複数の構成要素からなっている。プログラムの開発と実施を助けるための記入フォーム(用紙)とワークシート(あるいは計算シート)からなるツールキットも用意されている。このワークブックにはさらに以下の項目も含んでいる:


■医療従事者の鋭利器材損傷のリスクと防止に関する文献の包括的なまとめ
■鋭利器材損傷防止機能を備えた鋭利器材、およびそのような器材を選択する場合の基準の説明
■鋭利器材損傷防止に関連する情報を提供するウェブサイトのリンクのページ

このワークブックの使い方

このワークブックは鋭利器材損傷防止に関する広範な情報を提供する。情報は以下の場合に使用できる:

■医療機関が防止プログラムを立案、実施、維持継続する場合の参考に
■もし医療機関が特定のプログラムをすでに実施している場合には、それを強化・拡大するときの参考に

これらの原理は、あらゆる種類の血液媒介病原体への曝露の防止にも広範に適用できる。

中心となる対象者

この情報の対象者は医療管理者、プログラム・マネージャーおよび関連する医療機関の委員会を含む。ただしワークブックのすべての部分が特定の医療機関の活動にあてはまるわけではない。CDCは各医療機関に、自施設の鋭利器材損傷防止プログラムに該当し、必要と思われる項目のみを使用することを勧める。

ツールキットに掲載した記入フォーム(用紙)の見本およびワークシート(計算シート)も各ユーザーの実情に合わせて変更してもよい。いくつかの見本(たとえば基本評価)は、1回のみの使用を目的とする。一方、他の項目は(たとえば医療従事者の調査など)、定期的な使用を目的とする。

医療機関におけるワークブックの価値

このワークブックは、医療機関が鋭利器材損傷を防止するための実際的な方法を含んでいる。いったん実行したならば、このプログラムは医療従事者の職場の安全性を高めるのに役立つはずである。それは同時に、医療施設が政府機関の安全基準、ならびに以下の連邦および州の基準を充たすことにも役立つ:

■米国病院認定合同委員会(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organizations : JCAHO)の、感染サーベイランス、介護環境および製品評価に関する基準

■メディケアならびにメディケイド*2に関するセンター(Center for Medicare and Medicaid Services :CMS): メディケアおよびメディケイドの諸条件の遵守

■米国職業安全衛生管理局(Occupational Safety and Health Administration:OSHA)の、血液媒介病原体に関する基準(29 CFR 1910、1030)およびそれに関連する現場規制: 血液媒介病原体への職業上の曝露の検査手続きに関する基準(CPL 2-2.44、 11.5.1999): 本基準は最初の防止策として鋭利器材損傷防止機能の付いた器材の使用を義務付けている(www.osha.gov/SLTC/bloodbornepathogens /index.html)

■州ごとのOSHAの計画:血液媒介病原体の医療従事者への感染を予防するための連邦政府のOSHA 基準に該当し、あるいはそれよりも厳しい内容である

■州単位の針刺しの安全と防止に関する法律の制定:鋭利器材損傷防止機能の付いた器材の使用、および場合により特定の鋭利器材損傷の報告を義務付ける(www.cdc.gov/niosh/ndl-law.html)

■ 針刺し損傷防止に関する連邦法( F e d e r a l Needlestick Safety and Prevention Act)(PL 106- 430、11.6.2000):本法は1991年のOSHA血液媒介病原体に関する基準の改正を目指し、鋭利器材損傷防止機能の付いた器材の使用を義務付ける(詳細はPL 106-430のpdfファイル参照のこと)。