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結核菌排菌患者の入院管理について

職業感染対策実践レポート Vol.5
2008年6月発行
掲載内容は、情報誌「Ignazzo(イグナッソ)」発行時点の情報です。
はじめに

当院は、神奈川県川崎市にある1208床の特定機能病院で、結核病床を有しておらず陰圧空調室もありません。したがって、結核菌排菌患者は原則的に他の結核病床がある施設に紹介することになっていますが、さまざまな事情により当院で入院管理を行わざるを得ないこともあります。こういった場合に、実施している当院での結核対策について紹介します。
聖マリアンナ医科大学病院
感染管理専任看護師
高崎晴子

感染対策に取り組まれたきっかけは?
病棟で、感染症の患者さんに関わるなか、「どうしたら患者さんをこんな苦しい目に遭わせなくてすむのだろう?」という疑問から、感染看護に興味を持ち、大学院にすすんだことがきっかけです。

病室について

結核が疑われた症例は、すべて個室管理として、空気感染対策を行っています。
個室内の空気が、他の部屋に流れないように、ドアや空調の通気孔を塞ぎ、病室の窓に専用の脱着式の換気扇を取り付けています。
患者に接触する際、医療従事者は、N95微粒子用マスクをする対応をしています。
状況に応じてフィットテストを行い、きちんと装着できるように練習するようにしています。
排菌の有無については、最低3回連続で塗抹検査を行い確認しています。
塗抹検査結果が陰性の場合でも、他の状況から結核が疑わしい場合は、感染制御部と呼吸器内科医師、患者の担当医などが協議して対応を決めています。

外来での診察・検査について

咳が続く患者には咳エチケットの説明を行い、外科用マスクを装着していただいています。
症状や胸部X線検査で肺結核が疑われる場合には、医療従事者は、N95微粒子用マスクを装着して対応をしています。
当院では、専用の採痰ブースの設備はありませんが、他の患者と離れた場所や部屋に案内し、採取するようにしています。
吸引などの介助が必要な場合や、胃液採取の場合には、医療従事者がN95微粒子用マスクを装着して対応するようにしています。
また、良質な痰を採るためにも、できるだけ検体容器を患者に渡し、自宅で早朝の喀痰を採取し持参していただくようにしています。

当院では、塗抹鏡検、培養検査、PCR法による遺伝子検査を行っています。
また今後、クォンティフェロン検査の導入も予定されています。
塗抹鏡検は、夜間・休日帯でも緊急検査室で実施しています。他の検査については、原則として翌朝・休日明けの一番に検査を行うようにしています。
検査の結果が陽性の場合は、直後に細菌検査室より担当医・感染制御部へ電話で検査結果(塗抹鏡検、PCR、培養)が報告されます。
また、感染制御部には文書により翌日に検査結果の連絡についての報告(連絡日時、担当技師、診療科、担当医など)が行われます。

接触者調査について

表1、表2
検査結果が陽性と出た場合、事例ごとに感染制御部で検討した上で、接触者の調査範囲を決定しています。
感染危険度指数や胸部X線検査結果を参考に、感染源としての重要度を決定し(表1参照)、最重要・重要の事例では㈵−㈽群の接触者、その他の事例では㈵・㈼群の接触者を調査します。
調査は表2を基に担当医・看護師長が行います。医療従事者の接触者検診に関しては、保健管理センターが行っています。
保健管理センターでは、行政が決めた接触者検診対象者だけではなく、医師の判断で表1から、Aランクの人をフォローし、Aランクで発症者が出たらBランクにフォローの輪を広げるという考え方で行っています。
接触者検診の内容としては、29歳以下の者にはツベルクリン反応検査、胸部X線検査を行っています。
保健管理センター医師が検診内容・スケジュールを決定し、次の受診の時期や検査の内容などを説明しています。
また、受診を徹底するため、随時保健師が個人に受診の連絡を行っています。職員のツベルクリン反応検査は、入職時に二段階法で実施しています。