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B型インフルエンザウイルスにご注意!

B型インフルエンザはA型とは異なり、同じ患者から比較的長い日数をおいて、再度検出されることがあります。
2008年6月発行
掲載内容は、情報誌「Ignazzo(イグナッソ)」発行時点の情報です。

大阪府立公衆衛生研究所
ウイルス課
加瀬哲男
  B型インフルエンザウイルスは、インフルエンザの原因ウイルスの1つですが、亜型が複数存在しない、自然宿主がヒトのみであるなど、A型インフルエンザウイルスとは異なる点があり、自然界における存在様式は、A型とは大きく異なるものと考えられます。

 1999年の年初に大阪府においてB型インフルエンザウイルスの流行があり、われわれは同じ患者から数回にわたりB型インフルエンザウイルスを分離する機会を得ました。
うち十数人はその分離間隔が10日以上であり、同じシーズンに流行したA香港型では見られない現象でした。そこで、われわれは短期間(1〜3日)に連続して分離されたウイルスペアと10日以上の間隔(10〜39日)を経て分離されたウイルスペアについて血清学的、遺伝子学的差異について詳細に検討いたしました。その結果、同じ患者から2回以上B型インフルエンザウイルスが分離された患者は86人であり、そのうち14人は、その分離間隔が10日以上(平均21.4±13.1日、最長55日)でありました。
分離されたB型インフルエンザウイルスは血清学的にも、また遺伝学的にも、ウイルスペア内で大きく異なったものはありませんでした。
当初予想していたVictoria系統に属する株は分離されず、分離されたB型インフルエンザウイルスはすべて山形系統に属しており、2つの異なる株の同時流行ではありませんでした。
ただ、10日以上の間隔を経て、再度ウイルスが分離された患者の2回目ウイルス分離時の中和抗体価は低い傾向が見られました。

 同一と言っていいほど差異のないウイルスが同じ患者から比較的長い日数をおいて、再度検出される原因について、2つの可能性が考えられます。
1つは、ウイルスが持続的に感染しており、ヒトの側の反応が症状を決定している可能性であり、もう1つは、1シーズン内に同じ血清型のウイルスに再度感染した可能性です。
いずれの可能性にしても、10日以上の間隔を経て、再度ウイルスが分離された患者の2回目の中和抗体価は低かったことが、関係していると思われます。

参考資料

1森川佐依子1、前田章子1、加瀬哲男1、中川直子1、久保田律子1、馬場宏一2、奥野良信1(1:大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課、2:医療法人宏和会ばば小児科 院長):一シーズン内で同一個体から数回分離されたB型インフルエンザウイルスについての考察, 横浜市, 第47回日本ウイルス学会学術集会, 1999, 抄録P307演題番号3H1B