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インフルエンザ到来に向けて 医療従事者のマスク着用が遵守されているか?

職業感染対策実践レポート Vol.3
2005年11月発行
掲載内容は、情報誌「Ignazzo(イグナッソ)」発行時点の情報です。
はじめに

私たち医療従事者は、マスクの必要がある時に適切なマスクを正しく装着できているだろうか? 疑問である。咳、くしゃみ、会話の時などに飛沫が飛散し、顔の防御が必要となる場面に遭遇することがある。遵守の徹底は、現状把握やスタッフへの教育などが重要である。マスク装着を遵守するための当院の対応を紹介する。
聖隷福祉事業団
聖隷浜松病院
感染管理認定看護師
埋田 聖子

感染対策に取り組まれたきっかけは?
10年ほど前、看護部長より「日本では感染が大きな問題となっており感染対策は片手間にはできない、院内の感染管理を専門にする人間が必要である」を聞き、興味のあった分野だったのでICNを目指してみようと思いました。
 マスクの装着は個人が簡単にできる予防策である。その必要性は頭で理解しているが行動が伴わない。それは日常業務のいそがしさに流されてしまい、使いたい所にないと時を逸してしまう。そんな経験はないだろうか?
 当院では、使いたいときにマスクが装着できるように、スタッフの動線にあわせ、マスクと手指消毒剤を設置している。例えば、点滴作製場所の棚、手洗いシンク横、看護室、病室前、廻診車、診察室、処置室棚、など職場ごとに設置場所を工夫している。
 咳をしていてもマスクを装着しないスタッフ、マスクの必要性が分からずICNやリンクナースに注意されてからマスクを装着をするスタッフはいないだろうか?
 当院では、病棟の特殊性により、易感染患者が多い職場は常に自主管理を意識できるように勉強会の開催やリンクナースの呼びかけ、ポスターなどで啓蒙活動を行っている。
 自分が飛沫を飛散させる可能性があるとき、例えば点滴作製や観血的処置時に会話をする場合や風邪で咳がある場合、また患者から飛沫をうける可能性があるとき、例えば患者の吸引時や飛沫予防対策を実施している場合には、サージカルマスクやアイソレーションマスクを装着している。簡易マスク(ディスポマスク)は細菌濾過効率(表1)からも上記の装着には有効ではない、このマスクは業務中、顔に手を持っていかないための意識付けの装着や、家族が面会時に使用している。
 通常感染対策に関する院内共通物品の決定にICNやICDが、また資材課が単独で物品を決定することはないだろうか?感染管理の視点からICNやICDが選択し、数職場で使用後評価をしてから導入することが大切である。
 例えばマスクの評価項目は、息苦しさ、フィット感、肌との接触状況などである。当院でもコスト削減のために、細菌濾過効率≧99%サージカルマスクの変更を試みたことがある。しかし現場では、息苦しさがあり肌ざわりも悪いと評価し、継続して使用することができず再選択をした経験がある。経済性を考えた物品の選択をすることも大切だが、使用するスタッフが納得し理解しなければ現場で使用されない。遵守が継続されるためには現場の協力が不可欠である。

おわりに

 マスクを装着する対象は看護師だけではなくいろいろな職種がある。一律の教育では医療従事者全員のマスク装着の遵守は難しい。必要性を認識し正しく装着することを徹底するために継続した啓蒙が必須であり、必要に応じて個別指導をしていくことが重要であると考える。






飛沫感染予防策としてのサージカルマスク>>>