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院内感染を防ぐのも在宅医療を進めるのも、情熱

リビング名古屋(北)2003年6月14日

小牧市民病院内科部長・呼吸器科部長 院内感染対策委員会委員長 松本修一さん

【Profile】
名古屋大学医学部卒業。
豊橋市民病院内科、名古屋大学医学部第2内科、大垣市民病院呼吸器科医長を経て、平成2年、小牧市民病院呼吸器科部長に。平成12年から同内科部長も兼任。

自分の健康は自分で守る時代。何もかも医者にお任せというのではなく、病院とも対等に付き合いたいものですね。信頼できる地域の病院を選ぶポイントは何?病院の安全管理対策や具体的な体制づくりなどについて、小牧市民病院内科医の松本修一さんに聞きました。

地域全体の協力のもとで在宅医療を進める

—   人工呼吸器をつけている人の、在宅医療システムを作っているそうですね。

A 長い間入院していると、だれでも家に戻りたいと思うでしょう。帰りたい本人がいて、それを支える家族がいれば、何とか家で生活させてあげたい。私たちは、筋萎縮性測索硬化症や肺の疾患で人工呼吸器がはずせない人を在宅で診ていこうという取り組みを、6年前から始めています。
この地域は、3年前の東海豪雨で水浸しになったところです。人工呼吸器を抱えてどうやって避難したのか。追跡調査をしていく中で、さまざまな問題点が見えてきました。例えば公共の避難所は、人工呼吸器をつけた人のことは何も考えていないことが分かりました。この後名古屋市は、酸素吸入をしている在宅患者に対して特別に、今後の避難場所に医療機関を指定したという後日談もあります。また我々は人工呼吸器をつけた人がどこに住んでいるかを明記した用紙を作り、助けてほしい時には消防署にファックスをすればいいような仕組みも作りました。在宅医療を進めるには、地域全体の協力が必要なのです。


—   今の日本では、どうしても介護を担う家族に負担がかかってしまいますね。

A 外国では家族には家族の役割がある、介護は介護のプロがするという割りきった考え方がふつうで、呼吸器をつけていても自宅で充実した生活を送るケースが多くあります。日本では、家族に迷惑をかけるという本人の思いも消えません。
だから、病院医療と在宅医療との間に中間施設がほしいのです。一時避難的に利用できる施設があれば、家族も本人も気持ちが楽になるでしょう。行政と企業、医療機関が協力すればできないはずはないのですが…。

安全対策には看護師や検査技師の働きが大

—   院内感染対策委員会の委員長をなさっているとか。

A 院内感染が起こらないように、どこの病院でも非常に気を使っていると思います。小牧市民病院では、比較的早く院内感染対策委員会が発足しました。それでも実際に、抗生剤が効かない耐性菌を作らないよう情報を開示したり、薬剤を使った徹底的な手洗いの意識付けを図るなど、細かく注意を促す活動ができてきたのは2年ほど前からでしょうか。ICT委員やリンクパーソン委員などを置いて、院内感染対策委員会の組織を作り上げてからです。
ICT委員は医師、看護師、薬剤師、検査技師からなり、毎週集まって院内感染に関わる具体的な問題点を討議しています。リンクパーソン委員は、決定事項や討議内容を各部署に速やかに伝達する役割を担っています。新しい菌が出たというようなことを最初に発見できるのは検査室なのです。検査技師の働きは大きいと思います。