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ボランティアも活躍 市民が望む医療体制を模索中

リビング福岡 2002年12月21日

福岡市民病院 副院長 橋本俊彦さん(MRM委員会・CS委員会委員長)

【Profile】
九州大学医学部卒業。
福岡県立嘉穂病院、国立小倉病院、九州大学医学部付属病院第3内科医助手、講師を経て、平成13年4月から現職に。糖尿病専門医。

自分の健康は自分で守る時代。何もかも医者にお任せというのではなく、病院とも対等に付き合いたいものですね。信頼できる地域の病院を選ぶポイントは?個人ではなかなか知ることができない、病院の基本姿勢や地域医療の考え方などを、福岡市民病院副院長の橋本俊彦さんに聞きました。

人気の病院内コンサート 移動図書館で待ち時間も有意義

—     肩についている緑色の丸いワッペンは何ですか?

A 患者さんの満足度(CS)の追及と医療事故防止を目指して、病院全体でいろいろな取り組みをしていますが、このワッペンはMRM(メディカル・リスク・マネージャー)の印です。
患者安全衛生委員会、院内感染対策委員会、CS委員会など、いくつかの委員会を作っています。ちょっと自慢したいのは、院内コンサートを2ヶ月1回くらいの割合で開いていること。CS委員会の企画で、毎回わりと評判なんですよ。


—   医療スタッフだけでなく、ボランティアの人たちも活躍しているそうですね。

A 日々の診療の中で、患者さんの相談の窓口になってくださっていますが、そのボランティアの方々の発案で病院内に移動図書館を設けています。
病院に対する苦情の中で最も多いのが待ち時間の長さです。もちろん改善に努めていますが、少しでも短く感じてもらうために、職員たちが持ち寄った本を集めて外来に置いています。これは好評ですね。その後、午後には各病棟に運んで、入院患者さんからも喜ばれています。

最重要疾病は糖尿病と脳卒中 定期的な検診を欠かさない

—   専門の領域は?

A 内分泌代謝ですが、今一番気になるのが糖尿病です。糖尿病は国民病ともいわれ、最近は合併症が進行するまで放置している人も目立ちます。自覚症状がないのであまり気にしないのですね。運動不足と脂肪のとりすぎ、体重オーバーが最大の敵です。とにかく定期的に検査すること。
福岡市では、「健康日本21福岡市計画」を作って糖尿病と脳卒中を最重点疾病に取り上げています。市民病院でも昨年の4月から糖尿病の専門医2人体制にし、病棟スタッフを教育するとともに、患者の組織を立ち上げ、合併症を防ごうという試みを始めました。
糖尿病を放置すると、失明したり、心臓病などを起こして大変なことになる—ということをきちんと知っている人は40%強しかいないというデータがあります。福岡市計画では2010年までに100%の人が理解するように、まず啓発していこうとしています。

—   検診を受けて要注意と出たのに、病院に行かない人もいますね。

A 目標は受診率100%。糖尿病に限らず、受診をためらう理由の一つに検査が面倒ということもあるかもしれませんが、ここでは病院内に検査室を併設しているので、あらゆる検査結果がその場で分かるというのも特徴です。血液検査も30分も待てば分析結果が出てくるから、われわれ医師もその後の治療方針が決めやすくなります。
ここは市民病院ですから、市民にとって本当に必要な医療体制とはどういうものか、患者さんの満足度の追及という視点からも模索しているところです。