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伝統の心を守りながらも患者に選ばれるための変革を

リビング神戸東 2002年12月7日

甲南病院・副院長 絵野尚子さん

【Profile】
1968年神戸大学卒業。
1982年甲南病院に赴任。
97年甲南病院副院長に就任、眼科医との兼務で従事。

自分の健康は自分で守る時代。何もかも医者にお任せというのではなく、病院とも対等に付き合いたいものですね。信頼できる地域の病院を選ぶポイントは?個人ではなかなか知ることができない、病院の基本姿勢や医療に対するポリシーなどを、甲南病院副院長の絵野尚子さんに聞きました。

確かな技術とスタッフの熱意が病院の活性化を実現

—    総合的な診療科目に加え、各種専門外来など、充実した診療体制ですね。

A 日本でも有数といわれる透析センターでは、院内治療だけではなく、患者さんのニーズに合わせた在宅での腹膜透析(CAPD)も積極的に推進。有効かつ安全に行ってもらうため、地域にグループを作って指導、教育に当たるなどバックアップ体制にも力を入れています。また、学生・児童のために、昼の空いた時間、登校前などに予約診療を行い、喜ばれていますね。検査も委託ではなく自院で行っているので迅速な治療が可能。合併症の多い病気にも、それぞれの専門スタッフが連携してトータルな治療を実現しています。

—     給食も自慢だとか。

A 朝・夜どちらも選択メニューです。毎月、栄養士、調理師、医師、看護師が集まって会議を開き、患者さんの声を取り入れながらメニューを決定。お正月や節句などの行事食、誕生日や退院のお祝いなどは演出にも工夫をこらし、好評です。入院患者さんにとって唯一の楽しみともいえる食事ですから、今後も充実させていきたいです。選択メニューシステムは、半年という短い準備期間で、しかもスタッフを一人も増やさずに実現しました。スタッフの患者さんに喜んでもらいたいという熱意が感じられてうれしかったですね。

家族の心が患者を支える コミュニケーションの場が大切

—   付属の看護学校での教育にも力を入れているそうですね。

A 当院の看護スタッフは本当に優しくて優秀なんですよ。開院以来約70年、「熟練の技を、愛のこころで為す」という看護の基本理念が脈々と受け継がれています。患者さんに「看護士がいいから来てる」なんていわれることも。この甲南精神を次世代に引き継いでいくためには学校教育が大切です。私も講義に行きますが、一番に教えるのはマナー。職員間でもきちんとあいさつを交わせるなど基本的なマナーが身についていなければ、患者さんに喜んでいただける接遇なんてできませんからね。


—   特に患者さんと家族の関係を大切にしているそうですが。

A 治療というのは病院だけで完結するものではありません。家庭でも継続するのですから、それを支える家族の存在はとても大きい。私は眼科医ですが、点眼指導は家族にするようスタッフに指示しています。そうすることで患者と家族にコミュニケーションの場が生まれる。インフォームドコンセントも、患者と医師だけでなく、家族、看護師も含めて4人で行います。これもコミュニケーションの場を少しでも増やしたいという考えから。今後も大切なものは守りながらも、時代の要請を敏感に感じ取り、変革にチャレンジしていきたいですね。