救急・集中治療領域における感染症としては,敗血症とICUにおける院内感染の2つの対応が必要となる。その基本戦略として、感染症治療のみならず、感染症予防、免疫恒常性維持の3本柱が重要となるが、救急集中治療医からの視点と感染症医からの視点で感染症の見方に差異が生じうることもしばしばある。感染症医は状況に応じて重症感染症治療について推奨や提案を行うが、その根拠は必ずしも質のエビデンスで担保されているとは限らず、推奨根拠となる研究そのものの研究デザインが原因でミスリードを招いてきた可能性もある。さらにはPK/PD理論、de-escalation戦略など理論先行の推奨が独り歩きしてゴールデンスタンダードと化している部分があることも否定できず、近年ではこれらを覆しうるエビデンスも報告され始めている。
本講演では、感染症医として、またICU管理も行ってきた医師として、両方の視点をもって救急・集中治療領域において推奨されてきた“感染症診療のスタンダード”について検証するとともに,最近の感染症領域におけるいくつかのトピックスを話題提供として提示する。