医療関係者向けのページです

平成29年度日臨技九州支部医学検査学会(第52回) ランチョンセミナー3

開催地 長崎
会場 第5会場(長崎ブリックホール 3F)
開催日時 2017年10月21日 12:10〜13:10
備考 本セミナーは整理券制です。
配布場所:長崎ブリックホール 1階エントランスホール(総合受付近く)
配布日時: 10月21日(土) 8:45~

共催:平成29年度日臨技九州支部医学検査学会(第52回)/日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

抗菌薬適正使用のための適正な検査のありかた

座長:藤田 次郎 先生 琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科) 教授
演者:青木 洋介 先生 佐賀大学医学部国際医療学講座 国際医療・感染症学分野 教授

「この患者さんに抗菌薬を使用すべきか」、「どのような病原細菌を想定すべきか」という臨床上のクエスチョンには、問診、身体診察、一次、二次検査で得た情報を吟味して回答を見つける行程が必要です。
細菌感染症の有無を判断するには、発熱のmagnitude(高さ)、白血球分画、血液生化学所見、血清フェリチンの値、等が有用です、これらの一つ一つは非特異的検査項目ですが、複数が呈する所見次第では、抗菌薬が不要な発熱であることを一定の確率で示してくれます。Biomarker以上の精度で、と敢えて申し上げます。
「このマーカーを計測すれば細菌感染か否かおよそ解ります」と考えるのは「ウサイン・ボルト モデルのNikeのシューズを履けば100mを10秒そこそこで誰でも走ることができます」と言うことと似ています。ボルトさんは強靭な鋼のような肉体を造り上げ、その彼が運動力学的観点からデザインされたシューズを履くことで世界最速のスプリンターになったのです。
バイオマーカーを駆使することは、先ほど述べた、基本的検査の解釈ができる臨床力を養って初めて可能となります。三次検査あるいは特殊検査をいきなり行うのは、重要な基本をスキップした診療習慣であり、初期治療にいきなり広域スペクトルを使用する診療も、このやり方とよく似ています。いずれも見直しが必要です。
医療の周辺科学の発達と医療の進歩は「イクォール」ではありません。テクノロジー先行でどの程度役立つかよく吟味されないまま検査が市場に出てくると、医療の量は増えるばかりです:結果が陽性であれば勿論のこと、陰性であっても「否定できない」とう理由で医療行為が行われる傾向にあります。
感染症、癌、自己免疫疾患のマーカーを全てオーダーする、という光景も時々見受けられます。検査のし過ぎではないでしょうか。Parallel testingではなくsequential testingであるべきです。
今回は感染症診療で経験する患者さんの事例を紹介しながら、適正な検査とは何かという事をご一緒に考えてみたいと思います。