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第88回日本感染症学会西日本地方会学術集会
第61回日本感染症学会中日本地方会学術集会
第66回日本化学療法学会西日本支部総会
教育セミナー16

開催地 鹿児島
会場 第3会場(かごしま県民交流センター 2F中ホール)
開催日時 2018年11月18日(日)11:40-12:30
備考 本セミナーは整理券制です。
配布場所:かごしま県民交流センター2F ロビー
配布日時:11月18日(日)8:10~11:10
※整理券がなくなり次第、配布を終了いたします。
なお、整理券はセミナー開始と同時に無効となりますので、予めご了承ください。

日本国内のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の動向
~分子生物学的解析から得られた知見~

座長:栁原 克紀 先生 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野(臨床検査医学)
演者:原田 壮平 先生 藤田医科大学医学部 感染症科

カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae:CPE)は、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae:CRE)の中でも、感染症発症時の重症化リスクや医療機関内でアウトブレイクを起こすリスクが高いことが過去の報告から示唆されており、その存在を早期に認識することは重要である。
世界的には、CPEの中ではKPC型カルバペネマーゼを産生するKlebsiella pneumoniaeが最も広域に拡散しており、これ以外にはVIM型, NDM型, OXA-48-likeなどを産生するものが重要視されている。これに対して日本ではCPEの分離頻度そのものは比較的低いものの、IMP型のMetallo-β-lactamase(MBL)産生菌が多数を占め、なおかつ(おそらく地域差があるものの)Enterobacter cloacaeの関与の頻度が高いといった疫学的特徴を有する。一方で、近年では海外入院歴のある患者を介したIMP型以外のCPEの医療機関内への流入や、IMP型以外のCPEによる医療機関内アウトブレイクも報告されており、これらの関与も想定したスクリーニング検査、確認検査の枠組みを準備しておく必要がある。なお、CPEの中にはカルバペネムに耐性を示さない菌株も一定の割合で存在する点にも注意を要する。
PCRやパルスフィールドゲル電気泳動などの分子生物学的手法は耐性菌の疫学的解析の有力なツールである。これらを用いた研究により、国内においても海外と同様に、プラスミド伝達を介した複数クローン・複数菌種にわたるCPEの施設内アウトブレイクがみられうることや、長期療養型施設が地域におけるCPEのreservoirとなることが報告されている。また、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析法は近年、多剤耐性菌の解析に活用される頻度が急速に増している。CPEの医療機関内あるいは地域での拡散経路の推測においても、これまでの解析法では解明できなかったような詳細な情報を提供してくれる場合がある。これについては演者が解析に関わった複数の国内事例を紹介し、その有用性について論じたい。