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【医療と検査機器・試薬 43巻 4月号】
特集:慶應義塾大学病院臨床検査科リニューアル 「より迅速に、検査サービスの向上に努める」

慶應義塾大学医学部 臨床検査医学教授 / 慶應義塾大学病院 臨床検査科部長 村田 満

医療と検査機器・試薬 43巻4月号(2020年4月)


慶應義塾大学医学部 臨床検査医学教授
慶應義塾大学病院 臨床検査科部長 
村田 満 氏

 慶應義塾大学病院臨床検査科は2019年11月に大規模なリニューアルを行いました。本院は、特定機能病院、臨床研究中核病院、がんゲノム医療中核拠点病院として高度の医療に対応しています。臨床検査科では、①医療サービスの向上、②医療安全への貢献、③経済効率の追求、④医療の進歩に対応できる検査体制の維持の4つを理念に掲げています。より迅速に検査結果を報告するとともに、検査に関する情報発信などサービスの向上に努めています。
 今回のリニューアルは、新棟が建設されたこと、すでに大型の機器が耐用年数となっていたことから分析部門と採血部門で行いました。生理機能、病理、輸血の各検査部門はすでにリニューアルを終えています。
 最近、患者数の増加に伴い外来採血部門の待ち時間が長くなる傾向があったほか、診療前の検体検査は最長1時間以内と決めていましたが、これをオーバーすることもありました。
 2017年4月に移転プロジェクトをつくり、各部署が課題を出し合って、それを解消するための方策を検討しました。機器はTATの短縮をメインに掲げ選択しました。移転は2018年末から19年始めに行う予定でしたが、東京オリンピックの影響を受け建築資材の高騰、内装工事を行う職人が不足したことから遅延しました。
 臨床検査科では、これまで外注検査を内部に取り込む方向で検討を行ってきました。より早く正確な検査報告が欲しいといった診療側の要望を定期的に吸い上げています。今回の移転を機に、新規保険収載項目などを含めて院内導入項目を増やしました。機器や試薬の変更に伴い、共用基準範囲の変更を行いました。今後は、業務の効率化を一層進めることで、研究面や教育面の充実を図り、臨床検査科全員のモチベーションを高めていきます。
 さて慶應大学病院は2019年から3年間の事業として人工知能(AI)ホスピタル事業に取り組んでいます。病院の全部門が対象ですが、臨床検査科では、ロボットによる微生物検体の搬送、培養、画像診断といった実証実験を始めました。細菌の同定や感受性試験をAIに学習させることで一層の効率化を図りました。また、医学部ではバイオバンク事業に取り組んでおり、臨床検査科も加わっています。患者の同意が得られたすべての残余検体、さらに画像データなどを蓄積し、今後の研究につなげていきます。
 移転に伴い、臨床検査科内部では大変な苦労がありましたが、対外的には何もなかったようにスムーズに行うことができました。今後も診療各科の要望に応えられるように、常にアップデートしていきたいと思います。