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第61回日本臨床化学会年次学術集会 ランチョンセミナー3

開催地 福岡
会場 第3会場 福岡国際会議場4階 会議室411+412
開催日時 2021年11月5日(金) 12:10〜13:00
備考 本セミナーは整理券制ではありません。
直接会場へお越しください。

共催:第61回日本臨床化学会年次学術集会
   日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

血漿による生化学検査運用の実際

座長:堀田 多恵子 先生 九州大学病院 検査部
演者:山口 純也 先生 埼玉県済生会川口総合病院 臨床検査科


 生化学、免疫検査を実施する際に用いる検体には主に血清が用いられていますが、血清分離の際、誰もが経験する面倒な事例として「フィブリンの析出」があげられます。
フィブリンの析出は、不完全な血液凝固状態で遠心分離することが原因で起こりますが、特に透析患者等、ヘパリンを投与されている患者検体の血清分離を行う場合は、血液凝固までの待ち時間が長いにも関わらず不完全なため、遠心後もじわじわとフィブリンが析出してきます。また、凝固促進剤入りの高速凝固採血管で採取した場合は、抗凝固剤入りの採血管と同様、添加剤とよく混和させないと部分的に凝固不十分となり、フィブリンが析出しやすくなります。
このようなフィブリンの問題に加え、生化学、免疫検査項目が外来迅速検査加算の算定対象となってからはTAT短縮のために血漿を用いて検査を実施する施設も増えてきています。
しかし、血清から血漿に変更するには多くの問題があります。
 
血清と血漿の違い
・血清とは・・・
血液を凝固させ血小板や凝固因子を除いたもので,血小板の細胞成分や代謝物が増加しています。
・血漿とは・・・
抗凝固剤入りの容器に採血した血液を遠心分離して細胞成分(赤血球,白血球,血小板)を除いたものです。
・血清と血漿を用いて測定した場合・・・
いくつかの検査項目に明らかな差を生じます.血清では凝固反応過程で細胞から遊離してくる,カリウム,乳酸脱水素酵素,無機リン,アンモニアが有意に高値になり,血漿ではフィブリノゲンが凝固反応過程で消費されないため,総蛋白が有意に高値になります。
 
血漿が血清より都合が良い点
・検体測定までの時間短縮ができ、TATの短縮に繋がります。(血液凝固時間の短縮)
・検体量が増えます。(血漿の方が血清より約15~20%多く取れる)
・血漿の方がより生体内の状態を反映しています。
・血小板や白血球が原因の異常な高カリウム値を得ることはありません。
 
血漿が血清よりも不都合な点
・蛋白電気泳動分検査に影響します.(フィブリノゲンがγ-グロブリン領域にピークを形成)
・浮遊血小板を吸引することによる異常データの可能性があります。
・抗凝固剤が測定に影響を与えることがあります。用いる測定方法に対する抗凝固剤の影響を調べておく必要があります。
 
血漿を使用するには,多くの問題がありますが、当院では一部の患者検体を対象に臨床の協力を得て、血漿を用いて検査を実施するようになりました。今回はこの導入過程と現在の使用状況についてお話しさせていただきます。