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第33回日本臨床微生物学会総会・学術集会 ランチョンセミナー1

開催地 宮城
会場 第3会場(仙台国際センター 会議棟2F「萩」)
開催日時 2022年1月29日(土)12:15~13:15
備考 本セミナーは整理券制です。下記2か所で整理券を配布いたします。
(1)仙台国際センター展示棟 1F 展示案内 配布日時:
   1月29日( 土)8:30 ~ 11:45
(2)仙台国際センター会議棟 2F ホワイエ 配布日時:
   1月29日( 土)8:30 ~ 11:15
   ※整理券はセミナー開始5分後に無効となります。

共催:第33回日本臨床微生物学会総会・学術集会
   日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

コロナの陰で拡がる薬剤耐性菌感染症 -VRE感染症-

座長:加來 浩器 先生 防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授
演者:菅井 基行 先生 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター センター長

我々は2019年の暮れから今までに経験したことがない新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われた。世間がコロナウイルス一色の話題になる中、その陰で、ある薬剤耐性菌感染症が密やかに、しかし確実に増えてきている。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症である。
もともと日本はVREの分離率の低さに関しては世界の中で優等生の部類に入る。JANISデータとヨーロッパの伝統的なサーベイランスであるEARS-Netのデータを比較してみても、日本の耐性率*はヨーロッパの中で最も低い国々の値に近い(0.9%, 2018年)。日本のJANIS参加医療機関の中で9割の病院はVREを経験していない。
 しかし、JANISによるVRE分離数の経年変化をみると2019年以降分離患者が約1.7倍(697→1,176)に跳ね上がり、それを追うように感染症発生動向調査のVRE感染症届出件数が2020年に約1.7倍(80→135)に増加した。年別の届出数としては2020年の135例は2010年の120例を超えて最高値である。届出が出ている都道府県数も2013年が15都道府県であるのに対して、2020年は26と増加している。
 VRE感染症の増加は欧州においても警戒されている。欧州では VREの代表的な菌種であるEnterococcus faeciumのバンコマイシン耐性率が2017年以降、増加している。
近年の我が国のVRE感染症の特徴は地域の比較的大きな病院での院内感染、それに続く院内での拡がりが病院内に留まらず、転院などを介して、地域の療養型病床を持つような他の中小病院に波及し、さらにそこから他の医療施設に拡がるというように、地域への拡散が見られる点である。
本セミナーでは様相が変化してきているVRE感染症に焦点を絞り、最近の知見について紹介したい。

*Enterococcus faeciumのバンコマイシン耐性率