1-2. 感染症ってどうしてなるの?

その後は?

人のからだの表面は皮膚や粘膜(口の中、胃や腸の内側など)で覆われていて、病原体がその中へ侵入するためには、これらを通過しなければなりません。

ところで、皮膚の表面には角質(かくしつ)と言う膜があって、侵入を防ぐ手だてがととのっていますが、粘膜の表面には角質がないので、外からの侵入には、皮膚に比べれば脆い(もろい)と言えます。


でも、指をくわえて病原体の侵入を許す訳には行きませんので、その表面のpH(ペーハー;酸性、アルカリ性を表す数字)を工夫して病原体がとりつきにくい状態にしたり、病原体を排除する物資を分泌したりしています(第一の関門で*局所免疫と言います)。また、病原性のない菌(常在菌(じょうざいきん))で覆って**正常細菌相(せいじょうさいきんそう)を形成し、こっちへ来るな!と病原体を追い払ってもいます。尚、皮膚の表面にも正常細菌相はあって、粘膜と同じように追い払う役目を担っています。

さて、健康であれば病原体の攻撃をこれらが防いでくれます。ところが、他の病気で体力が落ちていたり、手術後であったり、また大きな傷を負っていたりすると、にわかに雲行きが怪しくなり、これらできごとが病原体の侵入を許すきっかけとなってしまいます。つまり病原体が局所免疫を突破することになります。

第一の関門を突破した病原体は、侵入してからだの中で増えたり、またその表面で毒素を出すなどして、悪さをしようとこころみます。すると今度は、からだの中で好中球(こうちゅうきゅう;リンパ球の一種)を中心にした防衛軍が、戦いを始めることになります。戦いが激しくなると、痛みや熱が出たり、局所が腫(は)れたりします。発熱や腫れ(炎症;えんしょう)、膿(うみ)などは、まさに、からだと病原体の戦いの様(さま)を表していると言えます。

そして、めでたくからだが病原体の攻撃にうち勝つと、今度はからだの中に***免疫が成立して、たとえ再び同じ病原体の攻撃を受けても大丈夫なように、これを追い払う能力を獲得することになります。

つまり、我々のからだはこのようなことを繰り返して、色々なものに対する免疫を獲得しながら寿命を全うする、全うしようと常にこころみている訳です。
*局所免疫
局所で病原体(バイキン)を退治、追い払うからだの仕組み。

**正常細菌相
腸管(ちょうかん)の表面(腸の内側の表面)に、ビフィズス菌など多くの乳酸菌が住み着いていたりすること。でも細菌相は年齢と共に変化して、例えば、赤ちゃんのウンチと大人のウンチはにおいが違ったりする。

***免疫(全身免疫)
からだの中に入った病原体(バイキン)を退治、追い払い、また同じ病原体に攻撃を受けないようにする仕組み。