●針刺し損傷が発生した後、感染リスクが高い場合には発症予防のための予防投薬などの治療が開始されるため、これにかかるコストが発生し、さらに感染が成立した場合には、治療のためのコストが発生します。
●発症予防のための予防投薬としては、HIV感染血液への曝露後に推奨されている薬剤を3種類全て服用した場合、1ヶ月で約17万円と報告されています。
●実際に、針刺し損傷によってHCV陽転した場合のコストとしては、検査費・入院ベッド費・肝生検費・インターフェロン費・その他の費用を合わせると、1例で合計約310万円という報告があります。
針刺し事故とコスト;島崎豊、INFECTION CONTROL’99 Vol.8 No.10
●さらに、米国では、針刺し損傷によるHCV感染の結果肝硬変に進展し、肝移植を実施するケースが報告されています。その場合の肝移植にかかるコストは$250,000(約3,000万円)と報告されており、肝移植後の腎不全に伴う腎移植と、さらなる悪化のために再肝移植を実施した看護婦の例も報告されています。
ADVANCES IN EXPOSURE PREVENTION Vol.5, No.2, 2000
●日本では、非加熱血液製剤によるHIVとHCVの重複感染後に末期肝硬変になった患者に対して2001年4月に生体肝移植が実施されました。針刺し損傷後の感染での移植例はまだ報告されていませんが、手術費用は1千万円を超すとみれらており、また移植を希望しても適合する肝臓の提供者がいないこともあり、判断は難しいといわれています。
●また、最終的には和解が成立しましたが、「針刺し損傷によってHCV感染したのは病院側が十分な指導をしなかったからだ」として病院を経営する医療法人を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は病院側に約2740万円の支払いを命じる判決を言い渡しており、日本でもこのようなコストも検討する必要性が出てきました。
日本醫事新報No.3954(2000年2月5日)