4-3. 院内感染と耐性菌3

監修:金光敬二先生(福島県立医科大学 感染制御医学講座 教授)
そうなのです! 抗菌薬が存在しなければ、これらを分解したりする能力自体が無用の長物であり、これらに耐える能力を細菌が持つ必要がなくなります。
イラスト:ペニシリン、セフェムがなくなるとペニシリン、セフェム耐性は必要なくなる
イラスト:抗菌薬(抗生物質)は処方された分をきっちり飲みきりましょう
病原菌(細菌)にとっては、自分の周辺にある栄養を効率よく取り込んで仲間を増やしていく(増殖すると言います)ことが一番大事なことであり、そのためには、余分なことにエネルギーを極力使わないようにします。

従って、抗菌薬がなければそれを分解したりする能力を持ったり、分解するために余分なエネルギーを費やす必要がなくて済むのです。

そして、すでに多くの抗菌薬が効かなくなった耐性菌であっても、自分の周辺に抗菌薬が存在しなくなれば、これらを分解する必要がなくなり、より効率的に増殖するため、耐性菌としての能力は失われて行くことになります。これも、より効率的に仲間を増やすものが生き残ると言う、適者生存なのです。

さて、これを病院内のことに置き換えて考えると、効き目の強力な抗菌薬を使い続ければそれに耐える耐性菌が増え続け、使用しなければ、全くゼロとはならないまでも非常に少なくなることを容易に想像できると思います。

もちろん、感染症にかかった患者さんの治療が第一ですから、抗菌薬を全く使用しないなどと言うことはあり得ません。また飲まざるを得ない場合は、耐性菌が出ないように完全に治るまで、徹底的にきっちり飲むことも大事です。勝手な判断で止めてしまうなど、もってのほかです。
イラスト:痰をとってしらべる 尿をとってしらべる 血をとってしらべる
このようにして、人への投与を慎重に、出来る限り必要なものだけにすれば、段々と始末の悪い耐性菌は消滅して行くと言えるでしょう。

キリンだって、生きる環境がまた変わって低地の草を食べなくてはならなくなれば、短い首の小さな草原の動物へ先祖帰りするかも知れません、遠い遠い未来には・・
院内感染についてパートII 「院内感染と耐性菌」 目次
4-1. 院内感染についてパートII 「院内感染と耐性菌」
4-2. 院内感染と耐性菌2
4-3. 院内感染と耐性菌3
4-4. 院内感染と耐性菌4