3. 院内感染について パートI

監修:金光敬二先生(福島県立医科大学 感染制御医学講座 教授)
イラスト:ゼンメルワイズ肖像画
病院の中で感染を防ぐためには手の衛生、すなわち手洗いとその消毒が重要であることを、既に160年も前、1840年代にゼンメルワイズ(Ignaz Semmelweis;ハンガリーの産科医)と言う人が述べています。

ゼンメルワイズは、出産に直接関わるお医者さんが手を清潔に消毒していれば、産褥熱(さんじょくねつ)*11による死亡率が劇的に下がると言うことを述べましたが(1861年に「産褥熱の原因・概念・予防」と言う本を出版)、これは正に、病院内での感染(院内感染)を防ぐ最も基本を言い当てていることになります。

ただ、残念ながらその当時は、そのような考えに同調する人がほとんどおらず、ゼンメルワイズ自身は、悲劇的な最期を迎えたと言われています。

時が経ち、感染症に関する学問(細菌学、感染症学など)は大きな進歩を遂げ、ゼンメルワイズは正しかったと認識できるようになりました。

私たちは、色々な抗菌薬による治療のおかげで感染症の恐怖から解放されつつあると考えられる時代に生きています。しかし、それでもちょっとした不注意、不用意な慣れなどによって、いまだ感染(院内感染)は起こりうるのです。

ゼンメルワイズは “手指を洗浄、消毒して十分に清潔に保てば、接触感染(触れあっての感染)を防ぐことが可能である” と言うことを、最初に証明しました。

治療や医療にたずさわる方々には、あらためて先人の注意に耳を傾けていただき、そして私たちは、私たちにもできることを実行しましょう。