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正確な検査のために精度管理、精度保障を徹底

リビング北九州 2003年1月18日

産業医科大学病院・中央臨床検査部長 大田俊行さん

【Profile】
昭和49年山口大学医学部卒業後、内科系研修医、九州大学大学院医学研究科(検査部)を経て昭和55年産業医科大学病院助手(輸血部)。昭和58年同大学第一内科講師、平成3年産業医科大学病院助教授(副部長:中央臨床検査部)、平成11年産業医科大学教授(産業医科大学病院部長:中央臨床検査部)。
学会活動:日本臨床検査医学会(評議員、専門医)、日本リウマチ学会、(評議員、指導医、認定医)、日本臨床化学会(評議員)、日本臨床免疫学会(評議員)、米国リウマチ学会(国際会員)など。

自分の健康は自分で守る時代。何もかも医者にお任せというのではなく、病院とも対等に付き合いたいものですね。信頼できる地域の病院を選ぶポイントは?個人ではなかなか知ることができない、医療の最新情報や病院の医療体制などについて、産業医科大学病院・中央臨床検査部長の大田俊行さんに聞きました。

正しい数値を当たり前に出すための病院の見えない努力

—   病院でよく血液検査や尿検査を行いますね。患者のために特に注意していることを教えてください。

A 検査は医療の縁の下の力持ちです。その結果は重要な診断材料ですし、また経過を性格に比較するためにも、常に一定の基準に基づいた数値が求められます。そのために、院内では精度保障や精度管理を確実に行っています。
例えば、皆さんがよくご存知の採血検査も、血を採って器械にかければいいというものではありません。スピッツ(試験管)には検査内容に応じた薬剤が施されているので、正しいスピッツを選んでいるかを確認。管にとる血液の量が多すぎても少なすぎても値が変わりますから、適切な量をとっているかなど、常にチェックしています。
機器のメンテナンスも重要です。病院では毎日、臨床検査技師が、サンプルとなる検体を使って一定範囲内の数値が出るように調整する、内部制度管理を行っています。
製品作りと一緒。大きさがまちまちのボルトを作っても意味がない。院内の検査は、必ず一定規格でなされているということです。

患者中心の医療を目指しメディカル面もサポート

—   他院との規格統一はなされていますか。

A 精度保障や精度管理は各医療機関ごとというのが実状です。しかし、福岡県では、ここと九州大学医学部附属病院、福岡大学病院、久留米大学病院、飯塚病院が「五病院会」という組織を作っていて、重要な検査に関しては、サンプル検体で毎日、規格をあわせています。関連病院でも行われます。
これは他県に波及しつつある、非常に前向きな取り組みです。正しい検査で、不必要な検査や医療が防止できると考えています。


—   検査の必要・不必要を患者が判断する方法はないのでしょうか。

A よほどの知識がない限り、難しいですね。ただ、かかっている先生がたくさんの検査をオーダーしたときは「どういう検査でしょうか」と聞いてください。また、結果をきちんと尋ねること。検査に限らず、良い医療のためには、医師と患者が対等な立場でコミュニケーションをとることが必要です。患者さんも積極になってほしいですね。
医療とは患者が中心にあるべきです。ここの検査部も患者さんとの接点を持とうと、データの見方についての相談窓口を作りたいという声が現場からあがっています。担当医が説明するには時間に限りがありますし、臨床検査技師が、患者さんが病気を治すために必要な知識を得るお手伝いをするということですね。
これまでは“測る集団”だった検査部門も、メディカルな立場としてチーム医療に参加することが大事だと考えています。