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小さなミスも隠さない 病院全体でチェックする

リビング岡山 2002年12月7日

心臓病センター榊原病院・副院長 畑隆登さん(外科・心臓外科指導医)

【Profile】
長崎大学医学部卒。
榊原十全病院(現心臓病センター榊原病院)、国立岩国病院、国立循環器センターなどの外科勤務を経て、1987年心臓病センター榊原病院心臓血管外科医長、94年副院長に就任、現在に至る。
2000年から、岡山大学医学部臨床教授に。

自分の健康は自分で守る時代。何もかも医者にお任せというのではなく、病院とも対等に付き合いたいものですね。信頼できる地域の病院を選ぶポイントは?個人ではなかなか知ることができない、病院の専門領域や医療に対する姿勢などを心臓病センター榊原病院 副院長の畑隆登さんに聞きました。

日本で最初の心臓手術に成功 予防から社会復帰までの総合循環器病院

—    ここは、日本の心臓外科学発祥の病院とうかがいましたが。

A 初代院長、榊原亨が初めて心臓外傷の手術に成功したのが1936年。今年の2月19日、1万例めの心臓血管手術を行いました。今、1年間に大きな手術だけで350〜400例、ペースメーカーを入れるような手術も含めると500例以上も行っています。手術成功も安定しており、昨年は通常の形での手術では死亡者ゼロ、緊急で運ばれてきた人の救命率は89%でした。これも循環器内外科を中心に、糖尿病科、眼科、消化器科などほかの科も含めた総合循環器という形の連携のたまもの。長い歴史の積み重ねでもあります。


—   病院的には本格的なプールもあるのですね。

A 手術後の、リハビリテーションのためのメディカルフィットネスクラブです。私たちが目指したのは、退院の翌日からの社会復帰でした。そのために十分なリハビリできるように作った施設ですが、もちろん一般の人も利用できます。地域に開かれた病院として、生活習慣病予防対策にも一役かっていると自負しています。

糖尿病による心疾患が急増 健康教育講座を一般にも公開

—   心臓手術にも時代による変化がありますか。

A かつては先天性心疾患が中心でしたが、今多いのは、後天性心臓弁膜症、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)などの手術です。いわゆる生活習慣病によるものが増えていますね。
世の中には医療情報があふれていますが、非常に健康に気を使っている人がいる反面、逆によくここまで放っておいたなという人もいて、両極端に分かれているのが現状です。特に救急で運ばれてくるような人の中には、大動脈瘤破裂という例も珍しくありません。
循環器の病気とは切り離せない糖尿病の増加は危機的な状況です。日本人の食生活が豊かになりすぎたのでしょうか。糖尿病は早めに内科的治療を受ければ、回復できるはずですが。
自分の体がどうなっているのかチェックして、それに対応するライフスタイルを考えていくことが大事ですね。ここでは糖尿病教室などの健康教育を行って、一般にも公開しています。


—   病院内の事故防止のためにどんなことに気を配っていますか。

A 医療技術がいくら進歩しても、人間のやることですから何が起こるかわかりません。それをどうやって防ぐか、常に検討していくしかないのです。病院全体の取り組みが必要です。
リスクマネージメント委員会を設置して専属のリスクマネージャーを置いていますが、何がリスクを生みやすいかを常に点検し、情報はすべて公開する。その上でダブルチェック、トリプルチェックをするしかないですね。