フローサイトメトリーは、細胞の物理的特性の評価などを行う単一細胞分析法です。フローサイトメーターでは、細胞集団は透明な生理食塩水に懸濁されています。この懸濁液をノズルに通して単一細胞流にします。細胞集団は一連のレーザー光源を 1 細胞ずつ通過していきます。レーザーでの測定時に細胞は光を散乱させます (1)。図 1 にフローサイトメーターの概略図を示します。
図 1.フローサイトメーター光学系概略図 (2)
細胞サイズとレーザー波長の比率によって散乱挙動が変わります。細胞サイズが測定レーザーの励起より小さいと、散乱挙動に一貫性がなくなり、散乱強度も低くなります。このため、レーザーは通常、測定対象の粒子よりも短い波長の光を放出します。波長は 488 nm または 405 nm がよく使用されます (1)。
光の散乱は 2 つの光学検出器で測定されます。1 つの検出器でレーザー光路上の散乱を測定します (1)。このパラメータを前方散乱光 (FSC) といいます。もう 1 つの検出器ではレーザーに対して 90 度の散乱を測定します (1)。このパラメータを側方散乱光 (SSC) といいます。これらを同時に測定すると、2 つの測定値によって不均一な集団内の細胞をある程度区別できます。
前方散乱光を測定すると、サイズによる細胞の区別ができます。FSC 強度は細胞の直径に比例します。これは主に細胞周囲の光回折によるものです。前方散乱光はフォトダイオードで検出され、光は電気信号に変換されます。生じた電圧の強さは測定細胞の直径に比例します (1)。
免疫系細胞の区別には FSC が役立ちます。単球とリンパ球は 2 種類の白血球です。一般的に単球はリンパ球より大きく、前方散乱光の強度が高くなります。
図 2.散乱パラメータに基づく FlowJo™ 解析用ソフトウェア でのリンパ球と単球の区別注: この例は説明用として作成されたものです。図の集団は実際の単球/リンパ球でないか、患者が急性単球増加症であるかのどちらかです。
側方散乱光の測定では、細胞内部の複雑さ (顆粒性状) に関する情報が得られます。レーザーと細胞内部構造との接点で光は屈折または反射します。側方散乱光を増加させる細胞成分としては顆粒や核があります (1)。
前方散乱光に比べ、側方散乱光からの光信号は微弱です。側方散乱光の測定には、より感度の高い光学検出器である光電子増倍管 (PMT) を使用します (1)。
図 3.散乱パラメータに基づく FlowJo™ 解析用ソフトウェア での顆粒球と単球の区別
検出器 (PMT またはフォトダイオード) を通過する信号 (電磁パルス) のそれぞれに対し、記録できる特性は 3 つあります。高さ、幅、そして面積です。パルス面積が最も一般的な報告値ですが、それぞれに明らかな利点と欠点があります。散乱パラメータの中で、パルス高とパルス幅のグラフは、サイトメーターを通過する単一細胞を分離し、それ以外のもの (ダブレット、凝集、またはデブリ) を除外するために使用されます。
図 4.散乱高および散乱幅パラメータによる FlowJo™ 解析用ソフトウェア での単一細胞分離
フローサイトメーターでは FSC と SSC が同時に測定されます。2 つのパラメータを組み合わせることで、細胞集団の分析を開始するためのしっかりした基盤が得られます。細胞定量の方法はまだまだありますが、散乱データから得られる情報はたくさんあるのです。
http://expertcytometry.com/whats-flow-cytometry-light-scatter-how-cell-size-particle-size-affects-it/
https://www.researchgate.net/post/Why_are_FCS_vs_SSC_dot_plots_in_linear_scale_and_other_parameters_in_logarithmic_scale
http://docs.abcam.com/pdf/protocols/Introduction_to_flow_cytometry_May_10.pdf
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